犬飼なのに犬嫌い?「犬飼さんちの犬」
これまで、犬を愛らしいと思ったことはあったけれど、それでも怖いという気持ちはぬぐえなかった。
まぁ、動物を飼ったことがないので、あまり動物に触れたことがないというのも理由ひとつかもしれない。
そのため正直に言うと、動物と人間の「心が通う」というハートフルな物語を理解できないでいた。人間同士でさえ仲良くなるには時間がかかるのに、異種間でそんなにすぐに心が通う分けないだろう、と...。
そもそも、全員が全員動物が好きだとか、おかしいんじゃないの?とも思っていた。
しかし、この「犬飼さんちの犬」はこれまでの「心温まるハートフルな動物と人間の交流」を描いたものではないようだ。なんといっても、主人公の犬飼保は、大の犬嫌いであるらしい。
犬飼なのに犬嫌い。
けれども、犬とのハートフルな物語だと、パンフレットには書いてある。一体どんな物語なのだろうと、ぼんやりと考えながら、ふかふかのシートと貸し出されたブランケットに包まれながら、映画を鑑賞した。
さて、ストーリーはというと、離島に単身赴任中だった犬飼保が1年ぶりに我が家に帰るところから始まる。
自宅にはすでに自分以外の家族と「家族」になっていた犬がいた。
名前はサモン。
愛しい娘と息子もサモンが大好きで、せっかく単身赴任から戻ってきた主人公よりもサモンと遊ぶことを優先してしまう。加えて、家族は自分の知らないところで、何やら新しいことを始めているようで...自分の居場所がない主人公はやるせない思いをかかえながらサモンと付き合っていく。
犬飼さんがサモンを認められない気持ちも、サモンが何を考えているのか理解できない気持ちも、だんだんとサモンが自分のそばにいることに「慣れ」ていく過程も丁寧に描かれていて、犬が怖い(距離感を測れない)私には彼の戸惑いや、不安や、恐れ、そしてサモンが可愛くないわけではない、という複雑な感情が手に取るように分かった。
そう、結局は「慣れ」なのだ。
嫌いになるのも怖くなるのも、好きになるのも、その慣れの経験値によるものなのだろう(と少なくとも動物を飼ったことがない私は思う)。
彼らの存在にまずは「慣れ」なければ、好きになれるはずがないのだ。
作中でも、犬飼さんは劇的にサモンを好きになるわけではない。ましてや、サモンの思っていることが理解できているわけでもない。ただ、日々の生活の中で、なんとなくサモンが近くにいるから。なんとなく、サモンがそこにいることに慣れてしまって、なんとなく互いの物理的距離が近づいた――。
そんな、犬と人間とのリアルな関係作り、という物語。
動物と人間との関係をおっかなびっくり築いていく、というような過程がないから、今まで動物と人間のハートフルな話は理解出来んかったんかー。そりゃそうだわな、と実感させられました。
最後に、ひとつだけ。始終気になって仕方がなかったことなのだが、主人公の勤務先は「株式会社バスコダガマ」が経営しているスーパーである。その会社の経営方針は離島にスーパーを出店するというものだ。
離島出店を方針としている会社の名前が「バスコダガマ」だなんて、ハイセンスだな...と思わず笑ってしまいました。
『犬飼さんちの犬」
監督:亀井亨
脚本:永森裕二
出演:小日向文世 / ちはる / 木南晴夏 / 池田鉄洋 / 徳永えり / でんでん / 佐藤二朗 / 清水章吾
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